石橋の手帖

2024年3月8日(金)

    『同志散る』

    散る桜残る桜も散る桜 良寛和尚
     
    大切な同志でもある大工が旅立ちました。
    享年51歳。
    この2年くらいの闘病末の旅立ち。
    最期は苦しむ事なく旅立ったとの事。
    悲しいという感情よりも、寂しいという感情。
    20年来の付き合いで、沢山の家を作ってくれました。
     
    彼はこの時代には珍しい昔堅気の正統派の大工。
    仕事も人付き合いも堅い。
    現場が綺麗なことはもちろん、道具もいつも綺麗。
    そう言った職人は当然に仕事も綺麗。
    決して手を抜かず、自分が納得する仕事をやり遂げる人。
    口数が多いわけではないが、発する言葉は重かった。
     
    「社長はいつもそう言うけどよ〜。大工ってのはなぁ〜。。。」
    と言って、僕の無理難題を、自分の大工としての心で話してくれた。
    いつもそうだったな。
    肯定しつつ諭す。
    結局最後はいつも分かってくれた。
    僕としては面倒臭い大工でもあった。
    だからこそ、僕は彼を信用したし、彼もまた、僕を信用してくれていたんだろう。
    最期に会ったのは、地元のラーメン屋。
    偶然隣に座った。
    その時に話していたことは、うちの現場監督への思いだった。
    彼らを一人前にしなきゃいけないよ。と言う話だった。
    いつも心配をかけていたな。
    ひだまりを愛してくれてありがとう。
     
    病気の状況は側から見ていても良くはない。
    会う度に、顔色も悪く、痩せていった。
    そんな中、昨年はひだまり匠の会の旅行や忘年会にも出てくれた。
    楽しそうな笑顔が脳裏に浮かぶ。
    思いかえすと、笑った顔しか思い浮かばない。
    そんなに笑ってたか?
    遺影の写真は満面の笑顔。
    そうそう。この笑顔だよ。
     
    通夜の晩にお寺さんが話してくれた
    散る桜残る桜も散る桜という、良寛和尚のお話。
    人は、綺麗に咲いている桜が永遠でない事を知っている。
    しかし、永遠であるかのように錯覚をする。
    今日という日は、彼が迎えられなかった今日である。
     
    本当は気の小さいあなた。
    だから、毎日毎日不安との闘いだったと思う。
    よく頑張ったな。
    これまで本当にありがとう。
    悲しくはないぞ。
    僕はただただ、寂しいだけ。
    あなたの愛したひだまりは、もっともっと成長させるよ。
    感謝。
     
    合掌。
     
     

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