石橋の手帖

2020年10月28日(水)

    『非効率のススメ』

    働き方改革に端を発した効率化への疑問。
    効率を求めるのは間違っていない。
    しかし、すべてにおいて効率化を求めるべきではないのではないのか?
     
    色々とある。
    接客やクリエイティブな仕事(プランニングなど)などの「人の手」や「人の頭」を使うこと。
    その中で一番効率化を求めてはいけないものが「社員教育」であると思う。
    コロナ渦になり、オンラインや在宅が増え、社内研修などが削減されているという。
    うちの会社でも、全体の会議などは縮小傾向にある。当然に、宿泊を伴う出張や研修は激減した。僕自身も新幹線に約半年くらい乗っていない。
    某コンサル会社からの研修DMは毎日のように大量に送られてくる。
    それくらい、集客が厳しいコトの裏付けであろう。
     
    問題になるのは若年者たち。
     
    経験不足・知識不足の若年者たちは、否が応でも、効率が悪い。
    そんなことは当たり前。むしろそれでいいと思っている。
    当然に時間がかかる。
    それを一律に許さない社会構造。
     
    これが困った。
     
    本来ならば、効率化を求めることのできる人間は、「出来る人」であると思う。
    出来るからこそ、スパイラルのように善の循環で効率を求めることが出来るし、その効果は無限ともいえるくらいの可能性を秘めている。
    しかし、非効率しかできない「まだ出来ない人」が、効率を求めることは、大事な基礎基本をおろそかにして、表面的な仕事の仕方しかできず、それは、5年後・10年後に大きく響いてくるに違いない。出来ないことが多い人が生まれてくるし、踏ん張りの聞かない人が多発する。
     
    言ってみれば、自動車教習所で免許を取る際に、一定の学習と実地が必要。ダメならば追試がある。
    その一定の学習と実施までも効率化しているようなものである。
    当然、交通ルールを学ばず、運転自術や感覚を養わず、路上に出て行けば、交通違反や交通事故が多発することにつながる。
     
    あるいは、
    最近はやりのアニメ鬼滅の刃を見ても、なぜあのアニメが共感するのか?という所にもヒントがあるように思う。
    主人公たちは、殴られ、殺されかけても、志を失わず、自分や家族、人間を守るため、何度でも立ち上がり、「悪」と対峙する。
    そして、戦いという経験値を数多く積むことで、強くなっていく。
    弱者が強者に立ち向かっていく姿に共感を得ていると思う。そこに、自分自身を投影している人も多くいるのではなかろうか。僕自身もその一人だ。
     
    また、昨年開催されたラグビーのワールドカップでのチームJAPANの興奮も似ている。
    ハードワークに誰一人として休むことなく(さぼることなく)、動き続け、自分の役割を全うし、結果的に各上の相手に勝利をして、史上初のベスト8に進んだ。
    その奇跡もまた、世界で一番ハードと言われた、激しい訓練と練習の賜物。決して効率的な訓練や練習ではなかったことは想像に難くない。
     
    半沢直樹も同じ構図。
     
    今世の中のたくさんの人は、本当は分かっている。
    若い人には、経験と圧倒的な努力が必要なことを。
    だからこそ、鬼滅の刃や半沢直樹に熱狂するのではないか。
     
    しかし、それが許されないジレンマ。
    当の本人たちにそこを求めても、未知の世界であり、無理というものである。
    我々先輩たちがしっかりと先導する必要がある。
     
    ここに、僕自身の迷いがある。
     
    本当ならば、若年者(3年目以内くらい)は、時間や効率など気にせずに、人の仕事を奪ってまで、徹底的に仕事をし、経験値を積み重ねた方が良い。
    特に、うちの社員は不器用者が多く、時間を要する。
    ある程度の経験や仕事への勘をつかんだその後に、多くの失敗や非効率の中から、何をどう効率化するべきかを考えれば、業務改善につながっていく。その頃は20代後半だろう。
    次のステージに立つということになる。
     
    しかし、中堅どころが、いまだ要領を得ず、若年者と同じとはいかない。
    やっぱりそうは甘くはないし、待つのも限界があるという本音。
    だから、中堅以降には、徹底的に効率化を求めるべきであるとも思う。
     
    僕自身は、働き方改革には大賛成である。
    といっても、世間で言われている時間による働き方改革ではなく、
    僕のいう所の「生き方改革」であり、「あり方改革」であるが。
     
    だからこそ、若年者へどのように圧倒的な経験や勘を養わせるのかが今現在の経営課題である。
    これまでも、あの手この手でやってきたつもりではあるが、いまだ要領を得ない。
     
    今回、マニュアル整備のプロジェクトを僕が主導してスタートをする。
    そのテーマが、
    「ノウハウをいかに共有化するのか?」
    「いかに一人の経験値を複数の経験値に拡散できるか?」
    ということ。
     
    また懲りずにチャレンジしていき、
    「令和の時代のハードワークのあり方」を
    見つけたいと思います。
     
    能力が高いと言われている人も、能力が低いと言われている人も、だれもが可能性を秘めている。
    その可能性は、非効率の中から生まれるとも思う。
     
    誤解を恐れずに
    若い人には「非効率」を猛烈にススメたい。
     
    ちょっと言い過ぎかな(笑)。

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